「消防点検」と「12条点検」は別物。届け先も罰金額も資格者も違う

公開: |運営: ubusuna works

「うちは半年に一度、消防の点検業者に来てもらっています」。そう聞くと、たいていの建物は大丈夫だろうと思ってしまう。ところが、その建物に特定行政庁(=建築のことを所管する都道府県や市区の役所)から「定期報告が提出されていません」という通知が届くことがある。消防の点検はきちんとやっていたのに、である。

消火器も自動火災報知設備も見てもらった。書類も残っている。それでも足りない。理由は単純で、消防の点検と、建築基準法12条にもとづく点検は、まったく別の制度だからだ。

同じ建物を見ているのに、報告先が違う

まず、根っこの法律が違う。

消防設備点検のほうは消防法第17条の3の3が根拠で、報告する相手は消防長または消防署長。つまり消防署である。一方、いわゆる12条点検は建築基準法第12条が根拠で、報告先は特定行政庁。役所の建築指導課などがこれにあたる。

消防設備点検

根拠は消防法第17条の3の3。報告先は消防長または消防署長。

建築基準法12条点検

根拠は建築基準法第12条。報告先は特定行政庁(建築を所管する役所)。

書類の宛先が違うということは、片方に出した報告書がもう片方に回ることもない。消防署の窓口で「建築のほうも受け取っておきますね」とはならない。当たり前のようだが、この当たり前が抜け落ちて、片方だけ何年も未提出という建物が出てくる。

見ている「もの」がそもそも違う

次に、何を見るか。

消防設備点検が確認するのは、消火器、自動火災報知設備、スプリンクラーといった消防用設備等が、いざというときにちゃんと動くかどうか。設備の機能である。

建築基準法12条の第1項でやる調査は、建物の敷地、構造、建築設備の劣化の具合を見る。建物がきちんと維持されているか、火事のときに人が逃げられる状態になっているか。着眼点が、機械の動作確認ではなく、建物そのものの状態にある。

ここで多くの人がつまずくのが、防火戸や防火シャッターの扱いだ。

ここが大事

防火戸・防火シャッターなどの防火設備、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置は、建築基準法12条第3項の建築設備等定期検査の対象です。消防法でいう「消防用設備等」(消火器や自動火災報知設備など)とは、別の区分として扱われます。

火事のときに閉まって炎を止めるシャッター。名前からして消防の担当に思える。だが、これは建築側である。「火に関係するものはぜんぶ消防」という感覚が、ここで裏切られる。

頼める相手も別

資格も分かれている。

消防設備点検ができるのは、消防設備士または消防設備点検資格者。建築基準法12条の点検ができるのは、一級・二級建築士、あるいは特殊建築物等調査資格者、建築設備検査資格者、昇降機検査資格者など(建築基準法施行規則第4条の20)。まったく別の資格制度である。

だから、長年出入りしている消防設備の業者に「12条のほうもお願いできますか」と聞いて、できませんと返ってくるのは珍しくない。逆もそうだ。悪気があるわけでも、手を抜いているわけでもなく、資格が違う。

発注する側としては、見積書に書かれた点検名と、その業者が持っている資格が噛み合っているかを一度は確かめておきたい。「防火設備の検査」と書いてあるのに消防設備士しかいない、というような食い違いは、あとで報告書が受理されない形で表に出る。

罰金の額に、3倍以上の差がある

そして、怠ったときの扱いも同じではない。

消防設備点検の報告義務違反は、消防法第44条第11号で30万円以下の罰金または拘留。建築基準法12条の報告義務違反は、建築基準法第101条第2号で100万円以下の罰金

建築側のほうが重い。この差を知らずに、「消防は毎年出しているから、まあ大丈夫だろう」と建築側を後回しにしている建物が、実際にある。金額だけで優先順位を決める話ではないけれど、罰則の重さは制度がどれだけ本気かを示している。建物そのものが傷んで人が逃げられなくなる事態を、法律は軽く見ていない。

もうひとつ、消防法の中にも別の点検がある

ややこしいことに、消防法の側にも複数の制度がある。

東京消防庁の解説によれば、消防法第8条の2の2にもとづく「防火対象物点検」という制度が別にある。これは防火管理の体制、つまり避難訓練や責任者の配置といった運用の面を点検するもので、設備が動くかどうかを見る消防設備点検とは、また違う。

つまり、建物によっては次の3つが並走していることになる。

  1. 消防設備点検(消防法第17条の3の3・消防署へ報告)
  2. 防火対象物点検(消防法第8条の2の2・防火管理の体制を点検)
  3. 建築基準法12条の定期調査・検査(特定行政庁へ報告)

どれが自分の建物に必要かは、用途と規模で決まる。3つ全部という建物もあれば、1つだけという建物もある。

まず確かめるのは、去年の報告書の宛名

最初にやることは、資料を取り寄せることでも、業者に相談することでもない。手元にある去年の点検報告書を引っ張り出して、宛名を見る。

消防署長宛の書類しか出てこなければ、建築側は空いている可能性が高い。逆に、建築士の名前が入った定期報告の控えはあるのに消防のほうが見当たらない、という建物もある。

見落としが起きやすいところ

建物を買った直後、管理会社を替えた直後は、片方の点検だけが引き継がれて、もう片方が数年抜けていることがあります。引き継ぎ資料に「消防点検」としか書かれていないと、建築側の存在に誰も気づきません。

防火シャッターがどちらの担当か、という問いに戻る。答えは建築側だった。ただ、シャッターの周りに感知器が付いていて、その感知器は消防側という建物もある。同じ場所に、二つの制度の線が引かれている。だから点検の日程も、記録の保管場所も、責任者も、分けて考えたほうがいい。

自分の建物に何が必要かがはっきりしたら、資格の区分に合う業者を探すことになる。点検ビトの業者データベースでは、対応できる点検の種類から絞り込めます。


参考:
東京消防庁「消防用設備等点検報告制度(消防法第17条の3の3)」 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenken_houkoku.html
国土交通省「定期報告制度に係る関係条文等(参考資料1)」 https://www.mlit.go.jp/common/000042696.pdf
総務省消防庁「点検報告制度に係る罰則規定について」 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/items/h30_betten06.pdf
e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201


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