消防設備点検で実際に何をされているのか
公開: |運営: ubusuna works
この記事の結論
法律が求めているのは「点検」と「報告」の2つです。点検は機器点検が6か月ごと・総合点検が1年ごと。報告は建物の使われ方によって1年か3年に分かれます。この2つは別の周期で動きます。
誰向けか: 消防設備点検で何をされているのかを知りたい建物の関係者
- 見積書に機器点検と総合点検が分けて書かれているか
- 自分の建物の報告が1年か3年か
- 報告は消防署へ出すものだと確認する
年に2回、業者が来て、消火器を見て、感知器にキャップのようなものを当てて、30分ほどで帰っていく。 請求書には「消防設備点検一式」とだけ書いてある。
何をされたのか分からないまま払い続けている建物は、たぶん相当な数がある。 分からないまま払っていると、金額が妥当かどうかも判断できない。
法律が求めているのは「点検」と「報告」の2つ
消防法17条の3の3が、防火対象物の関係者に消防用設備等の点検と、その結果の報告を義務づけている。 関係者とは所有者・管理者・占有者を指すので、ビルオーナーだけでなく、 テナントや管理組合が義務を負う場面もある。
点検の中身を決めているのは消防法施行規則31条の6で、種類は2つある。
機器点検は6か月ごと。 消火器の圧力と外観、消火栓のホースの劣化、 非常照明が点灯するか、感知器の外観に異常がないか。設備を「見て、触って、動かす」範囲の確認になる。
総合点検は1年ごと。 こちらは実際に作動させる。スプリンクラーから水を出す、 自動火災報知設備の感知器を加熱して受信機まで信号が届くかを確かめる、 排煙設備を動かして風量を測る。設備を全部つないだ状態で成立するかを見るので、 時間も人手も機器点検より要る。
出典: 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6 https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000008006
現場では機器点検が年2回、そのうち1回に総合点検が重なる。 これが「年2回来る」の正体で、2回の中身は同じではない。 見積もりに「年2回 一式」としか書かれていないとき、 1回目と2回目で作業量が倍近く違うことは、金額からは読み取れない。
報告の回数は、建物の使われ方で変わる
点検は全部の防火対象物で同じ頻度なのに、報告だけは分かれる。
特定防火対象物——飲食店、物販店、ホテル、病院、社会福祉施設のように、 不特定の人が出入りしたり、避難に助けが要る人がいる建物——は1年に1回。 事務所、共同住宅、学校、工場などの非特定防火対象物は3年に1回でよい。
分譲マンションは非特定なので、点検は年2回、報告は3年に1回。 ただし1階に飲食店が入っていると、建物全体の扱いが変わって報告が毎年になることがある。 複合用途の建物は、所轄の消防署に自分の建物がどちらかを確認しておいたほうがいい。
「3年に1回でいいと聞いた」という理解は、報告についてだけ正しい。 点検を3年に1回にしていた建物は、法令違反の状態にある。
誰が点検するのか、という問題
延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物などでは、 消防設備士または消防設備点検資格者による点検が義務づけられている(消防法施行令36条2項)。
裏を返せば、小規模な建物では関係者が自分で点検することも法令上は可能だ。 実際にやっている建物もある。
ただし総合点検で困る。スプリンクラーを作動させれば水が出るし、 自動火災報知設備を試験すれば、手順を誤ると消防隊が出動する。 自分でやって設備を壊した場合、修理費は点検費用の何倍にもなる。 「できる」と「やったほうがいい」は別の話で、 自分でやる判断が成立するのは、設備の構成を把握していて、 作動試験の手順まで書けるくらいの人が建物にいる場合に限られる。
費用がどこで決まるか
消防設備点検の費用は法定ではない。同じ建物でも見積もりは業者ごとに違う。 違いが出るのは、おおむね次の3か所である。
設備の数と種類。消火器が10本の建物と100本の建物では、点検にかかる時間が違う。 スプリンクラーや連結送水管がある建物は、総合点検の作業量が跳ね上がる。
報告書の作成と提出が含まれるかどうか。点検だけを安く出して、 報告書の作成を別途で請求する見積もりがある。報告書は消防署に出す書類なので、 どちらにせよ作らなければならない。合計額で比べないと意味がない。
不具合が見つかったあとの扱い。点検で「要是正」が出たとき、 改修工事を同じ業者に頼む前提の価格になっていることがある。 点検単体で見れば安いが、改修で回収される形になる。
見積もりを取るときは、機器点検と総合点検を分けた金額・報告書作成の有無・改修が別見積もりかどうかを それぞれ書いてもらうと、比較できる形になる。「一式」のままでは比べられない。
報告しなかったときに起きること
消防法44条11号は、点検結果を報告しない者、虚偽の報告をした者に 30万円以下の罰金または拘留を定めている。法人には両罰規定がある。
出典: 消防法(昭和23年法律第186号)第44条 https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186
罰金が科された事例はそう多くない。実務で効いてくるのは、消防署からの是正指導と、 建物の売買・賃貸のときに点検記録の提出を求められる場面のほうだ。 記録が3年分そろっていない建物は、取引の段階で値引きの材料になる。
点検は義務だから受けるものだが、記録は資産の側面を持っている。 そう考えると、業者を選ぶ基準に「報告書をどう残してくれるか」を入れる意味も出てくる。
当サイトでは、各都道府県が公開する建設業許可業者名簿(消防施設工事業)をもとに 点検業者を掲載している。地域と対応業務で絞り込める。
神奈川県内の掲載例: 横須賀市のアイシーテック(株)、 相模原市の(株)五幸、 横須賀市のワイズ工業(株)。
本記事は消防法および同施行規則に基づいて整理した。 自分の建物がどの区分に当たるかは、所轄の消防署に確認してほしい。