消防設備点検「6か月」と「1年」——機器点検・総合点検・報告義務の周期を条文で正しく理解する

公開: |運営: ubusuna works

事務所ビルの管理を引き継いだとき、前任者の残した年間予定表に「消防設備点検 3年ごと」と書かれていた。報告書の控えも3年おきに一冊ずつ、きちんと綴じてある。役所に出す書類が3年に1回なのだから、点検も3年に1回でいいのだろう。そう読める予定表だった。

これが誤りである。しかも、比較的よく見る形の誤りだ。

二つの周期が別々に走っている

消防法第17条の3の3は、防火対象物の関係者に対して、消防用設備等を定期に点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告することを義務付けている。一つの条文に「点検」と「報告」が並んで書かれているため、この二つが同じ周期で動いていると読んでしまう。実際には、それぞれ別の規定が周期を決めている。

点検のほうは、平成16年5月31日消防庁告示第9号。機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回。

報告のほうは、消防法施行規則第31条の6。特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回。

数字が「1年」で一度だけ重なるので、特定防火対象物——物品販売店舗、ホテル、病院、飲食店など——を管理している人は、この違いに気づかないまま正しく運用できてしまう。総合点検を年1回やって、その結果を年1回出す。それで足りている。

ずれが表に出るのは、工場・事務所・共同住宅・学校といった非特定防火対象物のほうである。報告は3年に1回で足りる。しかし点検は、6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検を、報告のない年も回し続けなければならない。3年のあいだに機器点検が6回、総合点検が3回。そのうち一度だけ、消防署に紙が出ていく。

報告周期に合わせて点検頻度を落とせば、消防法違反になる。冒頭の予定表は、まさにそれをやっていた。

機器点検と総合点検は何が違うのか

機器点検は、外観の確認と簡易な操作による確認である。総合点検は、設備を実際に作動させて機能を確認する。文字にすると一行で済むが、現場での重さはまったく違う。

作動させる、という一語が厄介なのだ。スプリンクラーや泡消火設備であれば放水・放出を伴う試験になり、自動火災報知設備であれば感知器を実際に働かせてベルを鳴らす。テナントへの事前告知、放送設備の停止解除、水を受ける養生、当日の立会い。年に1回の総合点検が半日で終わらないのは、点検そのものが長いからというより、この段取りが長いからである。

見落とされやすいのは、点検の中身が業者の裁量ではないという点だ。設備の種類ごとの点検基準・点検要領は、昭和50年10月16日消防庁告示第14号で定められている。何をどう見るか、どこまで作動させるかは、告示に書かれている。見積書の項目が薄いと感じたときに突き合わせる先は、他社の見積ではなく告示のほうだ。

罰則は法人にも及ぶ

点検を6か月ごとにやっていても、報告を出し忘れれば別の問題になる。点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、消防法第44条第11号により30万円以下の罰金又は拘留に処せられる。

30万円という額を見て、たいしたことがないと感じる人がいるかもしれない。ただ、この金額には少し変わった経歴がある。消防用設備等点検報告制度が創設された昭和49年6月1日以降、この罰則は変更されていない。半世紀近く据え置かれた金額なのだから、抑止の実質はそこにないと考えたほうがいい。

実際に効いているのは、平成15年10月1日に追加された消防法第45条の両罰規定である。違反者本人だけでなく、監督責任を有する法人にも30万円以下の罰金が科される。担当者が忘れていた、という説明で法人が外れる構造ではなくなった。3年に1回の報告というのは、担当者の異動をまたぐ周期でもある。前任者が3年前に出したのか出していないのか、控えを見ないとわからない状態が、いちばん危ない。

引き継ぎのときに確かめる二枚

では、非特定防火対象物の管理を引き継いだとき、何を見れば足りるのか。答えの半分は、報告書の控えである。直近の報告がいつ、どの消防署へ出ているか。3年周期のどこに今いるのかが、これで決まる。

残り半分は、報告のない年の点検結果報告書だ。消防署に提出していない年も、点検は行われ、点検票は作られているはずである。機器点検が半年おきに二回、総合点検が一回。その紙が手元に残っていなければ、実施されていない可能性を疑う段階に入る。業者に問い合わせて記録が出てこないなら、点検周期が報告周期に引きずられていたと考えるのが自然だ。

冒頭の予定表の話に戻る。あれを直すのは難しくない。「消防設備点検 3年ごと」の一行を、機器点検6か月・総合点検1年・報告3年の三行に割るだけである。厄介なのは、割ったあとに空いている過去の年をどう埋めるかで、これは所轄の消防署に相談する話になる。隠して次の報告だけ整えるのは、虚偽の報告のほうへ一歩踏み出すことになる。

点検の実施と報告の作成をどこまで委託するかは、建物の規模と設備の種類でかなり変わる。委託先を比較する段階に入ったら、点検ビトの点検業者データベースで対応設備や地域から候補を絞り込める。

出典


お住まいの地域の点検業者を探す

公的名簿にもとづき9,553社を掲載しています。都道府県からしぼり込めます(掲載は無料で、費用の有無で並び順は変わりません)。

都道府県別・点検業者データベース →

30秒で無料相談する