消火器の「5年」と「10年」——中を開ける年と、水圧をかける年は別々に来る
公開: |運営: ubusuna works
この記事の結論
「5年」と「10年」は別の点検です。中を開ける「内部及び機能の点検」は、蓄圧式の消火器が製造年から5年、加圧式が3年、化学泡が設置後1年で始まります。10年で始まるのは本体容器に水圧をかける「耐圧性能の点検」で、一度実施すると3年間は免除され、以後3年ごとに戻ってきます。どちらも新しい点検が足されるのではなく、半年ごとの機器点検で確認する項目が増えるという形です。
誰向けか: 消火器の点検費用が去年と変わった理由を知りたい建物のオーナー・管理会社・管理組合の担当者様
- 手元の消火器が蓄圧式か加圧式か(指示圧力計が付いているか)
- 本体に刻印された製造年から何年経っているか
- 見積書の消火器の行に、薬剤の詰め替え・部品交換(整備)が含まれているか
点検の見積書に、前回まで無かった行が増えていた。「消火器 内部及び機能の点検」。建物は変わっていない。消火器も買い足していない。
増えたのは、年数だけである。
5年目に増えるのは、点検の回数ではない
消火器具の点検の基準は、昭和50年消防庁告示第14号の別表第1に書かれている。開くと、大きな見出しが一つしかないことに気づく。「機器点検」である。総合点検の欄が、無い。屋内消火栓やスプリンクラー設備には1年ごとの総合点検があるけれど、消火器はそこに入らず、半年に1回の機器点検だけで完結する。周期の全体像は消防設備点検「6か月」と「1年」に整理した。
その機器点検の中身が、六つに割れている。設置状況、表示及び標識、消火器の外形、消火器の内部及び機能、消火器の耐圧性能、そして簡易消火用具。前の三つは毎回見る。後ろの二つには、始まる年が決めてある。
だから「5年経ったら点検しないといけないのか」という問いへの答えは、半分は「いいえ」になる。5年目に別の点検が足されるわけではない。半年ごとに来ていた同じ点検の、確認する項目が一つ増える。増えた分の手間が、見積書の行になって出てくる。
中を開ける年は、器種で3年・5年・1年に分かれる
| 消火器の種類 | 内部及び機能の点検が始まる時期 |
|---|---|
| 蓄圧式(指示圧力計が付いているもの) | 製造年から5年 |
| 加圧式(粉末・水・強化液・機械泡) | 製造年から3年 |
| 化学泡消火器 | 設置後1年 |
| 二酸化炭素消火器・ハロゲン化物消火器 | 対象外 |
よく聞く「5年」は、この表の一行目である。事務所や共同住宅の壁に掛かっている粉末消火器は、丸い指示圧力計が付いていれば蓄圧式で、5年。付いていなければ加圧式で、2年早い3年で来る。厨房に置かれた化学泡は、製造年ではなく設置後1年から始まる。
二酸化炭素消火器とハロゲン化物消火器だけが、この項目から外されている。高圧で封じられていて、現場で開けられないからである。
年数を待たずに始まることもある。外形の点検で安全栓、安全栓の封、緊結部などに異常が見つかったものは、製造年に関係なく中を開ける。3年・5年は「異常が無くても開ける年」の線であって、それまで開けなくてよいという意味ではない。
10年で来るのは、水圧のほうである
「10年経ったら機能点検が必要か」という問いは、半分だけ当たっている。10年という数字は、確かに同じ告示にある。ただし内部及び機能の点検ではなく、その次の項目——耐圧性能の点検のほうだ。
製造年から10年を経過した消火器は、本体容器とキャップに水圧をかけ、変形・損傷・漏水が出ないことを確かめる。点検要領は、所定の水圧を5分間かけると書いている。薬剤を全部出し、容器を水で満たし、加圧し、排水し、乾かして、詰め直す。一度実施すれば、そこから3年間は免除される。以後は3年ごとに戻ってくる。
蓄圧式なら、5年で中を開ける番が来て、10年で水圧の番が重なる。二つは別の周期で走っていて、途中で合流しない。
もう一つの10年と混ぜないほうがいい。ラベルに刷られた使用期限のことである。消火器の技術上の規格を定める省令は、表示しなければならない事項として「標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間又は期限として設計上設定される期間又は期限」を挙げている。設定するのはメーカーだ。省令は年数を書いていない。業務用消火器の多くに10年と印字されているのは、法定の点検周期がそこにあるからではなく、設計上そう決めたからである。
全数を開けるとは限らない
ここまでの話は、「5年経った消火器を全部開ける」と読める。実際にそうなる建物は、多くない。
外形の点検で安全栓・封・緊結部に異常が無く、加圧式の粉末消火器か蓄圧式の消火器であれば、抜取り方式が使える。器種、大型・小型の別、加圧方式の三つが同じものを1ロットにまとめ、製造年の古いものから、5年でロット全数が終わるよう概ね均等に抜き取る。10本のロットなら、1年あたり2本という勘定になる。
古い群は、別勘定になる。製造年から8年を超えた加圧式の粉末消火器と、10年を超えた蓄圧式の消火器は、まず別のロットに切り分けたうえで、2.5年で全数を回す。同じ10本でも、年4本のペースに上がる。建物の消火器が一斉に入れ替えられた年があると、その群がまとめて古い側へ移る年が来て、点検の本数がそこで跳ねる。
放射試験——実際に薬剤を出して放射状態を見る確認——の本数は、また別に決まっている。抜取りの対象なら抜取り数の50%以上、全数を開ける対象なら全数の10%以上。開けた本数と、撃った本数は一致しない。
点検票のどこを見るか
消火器の点検票には、点検した本数と、抜取りの対象にしたロットが書かれる。去年より金額が上がった年は、まずこの本数を前年の点検票と並べて比べる。本数が増えていれば年数が理由で、変わっていなければ単価の話である。
薬剤を入れ直した時点で、それは整備になる
中を開けたら、粉末が固まっていた。パッキンが老化していた。ここから先は、点検ではない。
消防法施行令36条の2第2項は、消防設備士でなければ行ってはならない整備を列挙していて、その2号が消火器である。同じ条の1項——工事の列——に、消火器は載っていない。消火器には工事という区分が無く、整備だけがある。点検そのものは関係者が自分でできる建物もあるが(その線引きは消防設備点検は誰がやってもいい?に書いた)、薬剤の詰め替えはその建物でも消防設備士の仕事になる。乙種第6類が消火器の類である。
当サイトが掲載している9,552社は、26都道府県の建設業許可業者名簿(消防施設工事業)から採録している(2026-09-03集計)。名簿を見れば、その会社が許可を持っていることは分かる。消火器の整備ができる免状の持ち主が社内にいるかどうかは、名簿には書かれていない。点検と整備の境目は消防設備の「点検」と「工事」は、別の資格と別の許可で動いているに整理したが、消火器についてはその境目がもう一段細かい。聞いて確かめるほかない。
見積書を、年で割って読む
跳ねる年は、事前に計算できる。製造年は本体に刻印されているので、蓄圧式なら+5年と+10年、加圧式なら+3年と+10年を書き出せば、この先10年の予算表ができる。
その表を持って見積りを頼むと、聞くことも決まる。今年は内部及び機能の点検の対象か。抜取りなら何本か。耐圧性能の対象になる本は何本あるか。薬剤の詰め替えや部品交換が発生したときの費用は、点検料に含まれるのか別なのか。最後の一つが一式でまとめられていると、開けてみるまで総額が分からない見積書になる。読み方は「一式」と書かれた見積書は、比較できないにまとめてある。
古い消火器を10年目に水圧にかけるより、新品に入れ替えたほうが安く付く場合もある。どちらが得かは本数と器種によるので、両方の金額を並べてもらうのが早い。
消火器の胴に打たれた製造年は、たいてい壁のほうを向いている。読むには一度、外さなければならない。
出典
いずれも 2026-09-03 に取得・確認した。
- 消防用設備等の点検の基準(昭和50年10月16日消防庁告示第14号)別表第1「消火器具の点検の基準」 総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/items/s50_kokuji14_bepyo1.pdf
- 消防用設備等の点検要領 第1「消火器具」および別添1「消火器の内部及び機能に関する点検方法」(抜取り方式による確認試料の作成要領) 総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/youryou1.pdf
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第36条の2第1項・第2項 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第38条第1項第19号ハ e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000008027
- 消防用設備等の点検基準・点検要領の一覧 総務省消防庁 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/post-1.html
- 掲載事業者数は当サイトの集計(9,552社・26都道府県) 集計日2026-09-03
- 個々の消火器がどの区分に当たるか、点検の対象になるかの判断は、所轄の消防署および点検を行う消防設備士・消防設備点検資格者にご確認ください