消防設備の「点検」と「工事」は、別の資格と別の許可で動いている
公開: |運営: ubusuna works
この記事の結論
点検と工事は別の制度である。点検は建物の関係者に課された報告義務(消防法第17条の3の3)で、工事のうち政令で定めるものは消防設備士免状を持つ者でなければ行えない(消防法第17条の5)。さらに請負金額が一定を超える工事には、建設業許可(消防施設工事業)が要る。点検を頼んだ会社が改修まで請け負えるとは限らない。
誰向けか: 点検で不備が見つかり、その後の改修を誰に頼むのか決める必要がある建物の管理者。
- その会社は点検だけの会社か、工事まで請け負う会社か(見積もりの前に聞く)
- 改修工事を頼むなら、消防施設工事業の建設業許可を持っているか
- 点検の報告と、改修の完了は別の期限で動く(報告を先に出す必要がある場合がある)
点検が終わると、報告書と一緒に「要是正」の項目が並んだ紙が届くことがある。そこで多くの人が同じ質問にぶつかる。この直しは、点検してくれた会社に頼めるのか。
答えは会社による。制度が別だからである。
点検は「報告する義務」、工事は「触れる資格」
消防法は、この2つを別の条文で扱っている。
点検と報告
建物の関係者(所有者・管理者・占有者)に課された義務。定期に点検し、消防長または消防署長に報告する(消防法第17条の3の3)。
工事と整備
行為そのものに資格が要る。政令で定めるものは、消防設備士免状の交付を受けていない者が行ってはならない(消防法第17条の5)。
第17条の5の条文はこうである。
消防設備士免状の交付を受けていない者は、次に掲げる消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事(設置に係るものに限る。)又は整備のうち、政令で定めるものを行つてはならない。
「行つてはならない」——禁止である。点検が「関係者がやるべきこと」であるのに対し、工事は「資格のない者がやってはいけないこと」として書かれている。義務の向きが違う。
さらに、金額が大きい工事には建設業許可が要る
消防設備士の免状は個人が持つものである。会社として工事を請け負うには、別に建設業の許可が要る場合がある。建設業法第3条第1項の本文はこう定める。
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所……を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。 ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
ただし書きにある「軽微な建設工事」だけを請け負う会社は、許可が要らない。だから許可を持っていない会社が違法というわけではない。小さな修繕だけを扱っているなら、それで足りる。
同条第2項は、許可を工事の種類ごとに分けると定めている。消防設備の工事はこの区分のうち消防施設工事業にあたる。当サイトが掲載しているのは、この許可を持つ会社である。
3つが重なって初めて、改修まで頼める
①点検を行える体制(資格者による点検が必要な建物もある)
②工事を行う消防設備士がいる
③請負金額に見合う建設業許可がある
点検だけの会社に頼むと、どうなるか
不備が見つかったとき、点検会社が別の工事会社を紹介する形になる。悪いことではない。ただし段取りが1つ増える。
見積もりの前に聞く1問
「点検で要是正が出た場合、そちらで改修まで請け負えますか。それとも別の会社になりますか」——この1問で、あとの段取りが決まる。点検の見積もりを取る段階で聞く。不備が出てから聞くと、そこで止まる。
報告の期限は、改修が終わるのを待ってくれない。要是正の項目があっても、その状態のまま報告する形になることがある。報告と改修は別の時間軸で動くので、どちらも先に段取りを決めておくほうがよい。報告の周期そのものは消防設備点検で実際に何をされているのかにまとめた。
会社を探すときの見方
当サイトが掲載している9,552社は、都道府県が公表する建設業許可業者名簿(消防施設工事業)からの転記である。つまり工事を請け負える立場にある会社が並んでいる。点検専業の会社は、この名簿には載らないことがある。
逆に言えば、この名簿から選べば「点検だけ頼んだのに、改修は別の会社」という段取りを減らせる可能性が高い。ただし名簿は許可の有無しか示さない。実際に点検業務を扱っているか、対応地域はどこかは、各社に確かめる必要がある。
地域から探す場合は都道府県別の一覧から入る。各社のページに、許可番号・所在地・電話番号と、その情報の出典・取得日を載せている。
出典
- 消防法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186)第17条の5 取得日2026-09-02
- 建設業法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100)第3条第1項・第2項 取得日2026-09-02
- 当社データ(掲載9,552社) 集計日2026-09-02
- 工事に資格が要る消防用設備等の範囲、および「軽微な建設工事」の金額は政令で定められています。個別の判断は所轄の消防署・都道府県の建設業担当窓口にご確認ください