12条点検の外壁調査をドローンでやるとき、告示とガイドラインは何を求めているか
公開: |更新: |運営: ubusuna works
この記事の結論
根拠は平成20年国土交通省告示第282号(改正 令和4年国土交通省告示第110号)です。ただし告示が認めているのは「赤外線調査」であって、ドローンはその撮影手段にすぎません。そして令和4年3月のガイドラインは、赤外線調査を単独では完結させず、調査の前に同じ部位で打診と赤外線調査の両方を行い、検出が難しい部位は打診に切り替えることを求めています。
誰向けか: 12条点検の外壁調査でドローンを検討している、ビル・マンションの所有者と管理者
- その業者は「打診との併用による確認」をどの箇所で行うと言っているか
- 報告書に9項目(適用条件のチェックリスト・併用確認の範囲と結果を含む)が入るか
- 赤外線調査実施者とドローン調査安全管理者が別の役割として立っているか
「外壁調査をドローンで済ませたい」と考えたとき、最初に気になるのは それで12条点検の報告として通るのかという点だと思います。
通ります。ただし「ドローンだから認められる」のではありません。 認められているのは赤外線調査という調査方法で、ドローンはその撮影手段の1つです。 そして、赤外線調査だけで外壁調査を完結させることは想定されていません。
このページは、根拠になっている告示とガイドラインが実際に何を求めているかを、 原文の文言のまま並べたものです。当サイトの解釈を足した箇所は、そう分かるように書いています。
根拠になっている文書は2つ
| 告示 | 平成20年国土交通省告示第282号(改正 令和4年国土交通省告示第110号) |
| ガイドライン | 定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン(赤外線装置を搭載したドローン等による外壁調査手法に係る体制整備検討委員会・令和4年3月) |
ガイドラインは、その目的をこう書いています。
ドローンによる赤外線調査(中略)を、平成20年国土交通省告示第282号(改正令和4年国土交通省告示第110号)(以下「告示」という。)に位置付けられているテストハンマーによる打診と同等以上の精度で実施するために必要な事項を定め、広く周知することを目的とする。
適用される範囲も限定されています。告示の調査項目のうち、
「2 建築物の外部 外壁 外装仕上げ材等 (11)タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等の劣化及び損傷の状況」の調査方法として用いる「赤外線調査」に適用する。
乾式工法の石貼りは対象外である点は、見落とされやすいところです。
「打診の代わり」ではなく「打診と併用して確かめる」
ここが、業者選びで最も効く一点です。ガイドラインは、調査本番の前に、 同じ部位で打診と赤外線調査の両方を行うことを求めています。
「3.5 調査の実施(打診との併用による確認を含む)」に先立ち、同一部位において打診と赤外線調査を実施し、赤外線調査による浮きの検出状況の確認を行い、その結果検出が難しいと判断される部位については測定条件の変更、打診での調査の対応とする。
ドローンを使う場合も、4.2.2 に同じ趣旨が書かれています。
つまり「足場を組まずに全面をドローンで」という説明だけで完結する調査は、 ガイドラインの手順を踏んでいないことになります。 打診をどこで、どれだけ行うのかを、見積もりの段階で確かめてください。
適用できるかどうかは、現地を見ないと決まらない
3.2.1 が挙げる確認事項は、机上では決まらないものばかりです。
- 調査時の気象条件(天候、環境温度、風速等)
- タイルの種類
- 適切な撮影角度や離隔距離の確保の可否
- 軒裏、出隅、入隅など一般に赤外線調査が困難な箇所の存在
ドローンの場合は、これに 4.2.3 の飛行可否の確認が加わります。 建物高さ、建物からの離隔距離、周辺の電波環境、障害物などです。
そのため、ガイドラインは事前調査について **「事前に予備調査に加えて現地調査を実施することを原則とする」**としています。 現地を見ずに出てきた金額は、この原則を踏んでいません。
報告書に入るものは9項目(ドローンの場合)
4.7 は、報告書に「記載すべき項目」を9つ挙げています。
- 建築物概要(建築物名、所在地、構造・階数、竣工年、仕上げ材の概要、補修歴)
- 調査実施体制(調査会社名、調査責任者名等、資格等)
- 調査実施日、調査時の天候及び環境条件
- 赤外線装置の仕様・性能
- 調査対象の外壁面のうちドローンによる赤外線調査を実施した箇所及びその他の方法で調査を実施した箇所
- 調査時の適用条件に関するチェックリスト
- 打診との併用による確認を実施した範囲、結果の明示
- 浮きと判定した箇所を明示した外壁調査結果図
- 熱画像及び可視画像
加えて、ドローン調査安全管理者がドローン飛行計画書を作成し、報告書に添付します。 飛行計画書には、飛行許可・承認情報、資格、加入保険、飛行ルート図、緊急時対応などが入ります。
6と7は、当サイトが見るかぎり見積書の段階では書かれないことが多い項目です。 ここが後から揉めやすいので、依頼の前に一度聞いておくことをおすすめします。
関わる人は3つの役割に分かれている
ガイドラインは、責任の所在を役割で分けています(2.1・2.2)。
| 役割 | 求められるもの |
|---|---|
| 外壁調査実施者 | 建築基準法12条1項に基づく定期調査を実施する者。1級建築士もしくは2級建築士、または建築物調査員資格者証の交付を受けている者。赤外線調査全体を統括し、「著しい浮き」の有無を確認する |
| 赤外線調査実施者 | 建築物及び赤外線調査に関する十分な知識と、建築物調査等の実務経験。熱画像の撮影・分析・浮きの判定を行い、その責任を負う |
| ドローン調査安全管理者 | 建築物調査、かつドローンの飛行に関する知識。操縦者・補助者を掌握し、ドローンに関連する職務の遂行に責任を負う |
操縦者は、この3つのどれでもありません。 「ドローンの資格を持っています」という説明だけでは、 判定を誰が行い、誰が責任を負うのかが分かりません。ここは分けて聞いてください。
特定行政庁への事前確認について
定期報告の運用は特定行政庁(自治体)ごとに異なります。 これは当サイトの助言であって、告示やガイドラインの要求ではありませんが、 大がかりな調査に入る前に、所轄の建築指導課へ実施方法を一度伝えておくと、 報告書の受理でつまずきにくくなります。
出典
- 平成20年国土交通省告示第282号(改正 令和4年国土交通省告示第110号)
- 国土交通省「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン」(赤外線装置を搭載したドローン等による外壁調査手法に係る体制整備検討委員会・令和4年3月)— 2026年9月6日取得
飛行許可・承認の手続きと、依頼から報告書提出までにかかる日数は 外壁ドローン調査は「足場を組まない分だけ早い」とは限らないにまとめています。 費用の比較は外壁調査はドローンでいくらかかる?打診調査との費用比較をご覧ください。