消防設備点検を自分でやれる建物と、やらなくてよい建物

公開: |運営: ubusuna works

この記事の結論

そもそも点検義務の無い建物があり、義務があっても関係者ご自身で点検できる場合があります。ただし一定の建物は有資格者でなければなりません。自分でやる場合も、様式に沿った記録と消防署への報告は同じように必要です。

誰向けか: 費用を抑えたくて、自分で点検できないか調べている建物の所有者

  1. そもそも点検義務のある建物か
  2. 有資格者でなければならない区分に入っていないか
  3. 自分でやる場合の様式と報告の手順を用意できるか

小さなアパートを1棟持っている。消火器が数本あるだけで、 自動火災報知設備も無い。それでも点検業者に毎年払うのか。

払わなくてよい建物と、払わずに自分でやれる建物と、必ず頼まなければならない建物がある。 線を引いているのは消防法施行規則で、建物の用途と延べ面積で決まる。

そもそも義務が無い建物がある

消防用設備等の点検義務は、消防法17条の3の3により 「政令で定める防火対象物」の関係者に課される。

対象になるのは、消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物のうち、 消防用設備等または特殊消防用設備等が設置されているものである。 つまり、設置義務のある設備が何も無い建物には、点検の義務も生じない

戸建て住宅は別表第一に掲げられていないので、原則として対象外になる。 住宅用火災警報器の設置義務はあるが、これは点検・報告の対象ではない。

小規模な共同住宅では、消火器の設置義務があるかどうかが分かれ目になる。 延べ面積150㎡未満の共同住宅では消火器の設置義務が無い場合があり、 他に設備も無ければ、点検の対象にならない。

自分の建物に何の設備が義務づけられているかは、所轄の消防署で確認できる。 図面を持って行けば、設置義務のある設備を教えてもらえる。

有資格者でなければならない建物

義務がある建物のうち、次に当たるものは 消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要になる(消防法施行令36条2項)。

  • 延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物(1号)
  • 延べ面積1,000㎡以上の非特定防火対象物のうち、消防長または消防署長が指定したもの(2号)
  • 特定用途が避難階以外の階(1階・2階を除く)にあり、そこから避難階または地上に直通する階段が 2以上ない建物(3号)

3つ目は面積に関係なく該当する。 雑居ビルで階段が1つしかない建物は、小規模でも有資格者が必要になる。 ただし階段が屋外にある場合、または避難上有効な構造である場合は、1つでも足りる。

自分の建物がどれに当たるかは法定点検 期限チェックで確かめられる。

これに当たらない建物では、関係者自身による点検が法令上は可能である。

自分でやる場合に何をするのか

点検の中身は業者に頼む場合と変わらない。 機器点検を6か月ごと、総合点検を1年ごとに実施する。

使う様式も同じで、総務省消防庁が示す点検票に記入する。 消火器なら、設置場所、圧力指示計の指針、安全栓の封、ホースの詰まり、 製造年から10年を超えていないか、といった項目を1本ずつ見る。

報告書には点検を行った者の氏名を書く。 有資格者でなくてよい建物では、免状の番号欄は空欄になる。

現実的に自分でやりやすいのは、消火器だけの建物である。 外観と圧力を見るだけなので、様式に沿って進められる。

失敗が起きやすいところ

自動火災報知設備がある建物で自分でやろうとすると、総合点検で困る。

感知器を加熱・加煙して作動させ、受信機まで信号が届くかを確かめる工程がある。 このとき受信機を試験状態にせずに作動させると、ベルが鳴り、 自動通報装置が付いていれば消防隊が出動する。 非火災報として記録が残り、建物によっては始末書を求められる。

スプリンクラーの総合点検も同様で、末端試験弁を開けて放水圧を測る。 手順を誤ると室内に水が出る。

10年を超えた消火器の扱いも見落としやすい。 製造年から10年を超えた加圧式消火器は、耐圧性能点検(水圧試験)が必要になる。 これは目視ではできない。設備を専門に扱う業者に出す工程になる。

自分でやる判断が成立するのは、消火器と誘導灯くらいまでというのが実務の感覚になる。 それを超える設備がある建物では、作業を止められる事故のほうが費用より高くつく。

頼まない選択をする前に

点検を業者に頼まない場合でも、報告の義務は消えない。 点検票と報告書を作り、消防署に出す工程は同じである。

そして報告しなかった場合の罰則も同じで、 消防法44条11号により30万円以下の罰金または拘留になる。

「自分でやる」は「何もしない」ではない。 点検の費用は浮くが、様式を読み、記入し、提出する時間はかかる。 1棟だけなら成立することもあるが、複数棟を持っているオーナーでは、 時間のほうが先に足りなくなることが多い。

当サイトでは、各都道府県が公開する建設業許可業者名簿(消防施設工事業)をもとに 点検業者を掲載している。まず相場を見てから、自分でやるかどうかを決めてもいい。

消防設備点検業者の一覧 | 費用相場の早見表

本記事は消防法および同施行規則に基づいて整理した。 自分の建物に設置義務のある設備と、有資格者が必要かどうかは、所轄の消防署に確認してほしい。


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